平安の都情緒満載の「光る君へ」で玉置玲央の藤原道兼を追いかける!

平安時代の貴族

大河ドラマ「光る君へ」のキャスティングが面白い

2024年1月、NHK大河ドラマ「光る君へ」がスタートしました。紫式部を主人公に、当時の王朝貴族の権力闘争や、藤原道長との交流などを描く平安時代の歴史ロマンです。

脚本は、男女の機微を描く天才・大石静、主人公の紫式部役は、現代のぶっちゃけOLを演じさせたら無類の吉高由里子、そのソウルメイトとして登場する藤原道長に、吉高と相性抜群でただならぬ魅力をもつ柄本佑が配されています。

出典:大河ドラマ「光る君へ」NHK公式サイト

こういうキャスティングの妙は何と言っても大河ドラマの魅力ですが、今回もまた、これでもかというくらいキャストが面白い。花山天皇の本郷奏多、藤原実資のロバート秋山、藤原兼家の段田安則。中でも個人的に目が離せないと思った役を言わせてください。

藤原道兼

道長の5歳上の同母兄です。この道兼を玉置玲央が演じています。

道兼はなぜ一族の繁栄の功労者になったのか

この道兼は、兼家一族が権力を握るに至った最大の功労者でした。

彼は父・兼家の意を受けて、皇太子懐仁(のちの一条天皇)を即位させるため、花山天皇が寵妃の死を嘆くのにつけこんで出家させてしまいます。自分もお供するからと噓をつき、まんまと出家させた後に逃げ出して、花山は「我をば謀るなりけり」と落涙した、と『大鏡』にあります。

この手柄で関白は当然自分に譲られると思っていた道兼は、案に相違して兄・道隆が関白となったため憤慨し、父の喪にも服さず荒れます。

「この殿、父大臣の御忌みには、土殿などにもゐさせたまはで、暑きにことつけて、御簾どもあげわたして、御念誦などもしたまはず、さるべき人々呼び集めて、後撰・古今ひろげて、興言し、遊びて、つゆ嘆かせたまはざりけり」(『大鏡』右大臣道兼

(この道兼殿は、父・兼家殿がお亡くなりになった喪中には、土殿などにもお籠りにならず、暑さにかこつけ御簾をすべて巻き上げて、御念誦などもなさらず、遊び仲間を呼び集めて後撰集や古今集をひろげ、面白い座興をし、音楽を催したりして、まったくお嘆きにならなかったそうだ)

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さてここまでは『大鏡』の内容ですが、今回、大河ドラマ「光る君へ」の新機軸とも言えるのが、初回、この道兼がなんと紫式部の母親を殺してしまうという奇怪な設定でしょう。

段田安則演じる父兼家は、つまらぬことで自分の手を汚した玉置道兼を責め、その代償として家のため働くよう告げます。

父によって汚れ役の実行犯に指名された道兼。
その後道兼は円融天皇の食事に毒を混ぜるなど、父の良い子として諄々と務めを果たしてゆきます。
彼がなぜ功労者になっていったのか、屈折した父子の関係に、より一層焦点を当てる脚本ともいえます。

道兼を演じる玉置玲央がとにかく良い

出典:大河ドラマ「光る君へ」NHK公式サイト

この腹に一物も二物もあるような、屈折した道兼を玉置玲央が好演しています。

2018年玉置は、大杉漣の最後の主演作となった映画「教誨師」で、17人を殺した死刑囚タカミヤ役で、毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を獲りました。

大杉演じるプロテスタントの牧師サエキに、自分は世の中を変えるために殺人を犯したのだと平然と切り返すタカミヤ。

理想のため境界を越え手を汚した彼が最後どのように崩れるのか、まさにはまり役というべき名演でした。

なお、今年2024年3月、東京芸術劇場プレイハウスでショーン・ホームズ演出の舞台「リア王」が幕を開けますが、主役のリア王が、父・兼家役を演じる段田安則。
この敵役のエドモンドを玉置玲央が演じます。
グロスター伯の庶子として、父から恥ずかしい存在とみなされている息子の役です。

屈折、野心、そして父子関係。
境界を越え、手を汚した人間としての玉置玲央が、大石静のえがくNHK大河ドラマ「光る君へ」の世界で、この先どんな顔を見せてくれるのか、こりゃあ楽しくてしょうがない。
道兼さん、どんどん面白いことになっていってください。

この記事を書いた人
入江 澪