憩いのひととき、緑茶~喫茶から甘味・渋味・苦味を感じてみる~

緑茶を淹れている様子

茶を喫するというと仰々しいのですが、人それぞれの嗜好にあったお茶を選び、つねひごろの生活の中でお茶を味わっておられると思います。

夏の暑さも冬の寒さも、また風や空気の居心地がいい春や秋も、憩いのひとときにほっとリラックスできるのが、まさに一服のお茶ではないでしょうか。

お茶といえば、何を選んでおられるでしょう?

日本茶、コーヒー、紅茶などありますが、私は日本茶、つまり緑茶派です。

コーヒーにこだわりをお持ちの方は、あまり日本茶は好まれないような感があります。

京都にはコーヒーの美味しい喫茶店やカフェがあまたあるそうですが、個人的にはほとんど口にすることがありません。

豆を挽いた際の香りに魅了されますが、苦味が強いのと後味の酸味が少し苦手で、またトイレが近くなるのでコーヒーとは少し距離を置いている関係になります。

こうお茶に少し関心が向いてしまうのも、伊右衛門のCMがふと目に入り、女優が発する京ことばが違和感なく流暢でなかなかに良い風情を出している点に頷いてしまったからです。

今回、緑茶をテーマに京つねひごろ的な趣向をお届けします。

緑茶あれこれ

日本茶といっても、調べてみると多くの種類があり、それぞれどのような特徴があるのか興味が湧いてきます。

私的な印象となりますが、少しお示しします。

煎茶

もっとも一般的な緑茶。お値段も手ごろで、どのお店にも売られていて入手しやすいです。

玉露

緑茶の中で最も高価。

喉の渇きを潤すようなお茶ではなく、少量を舌にのせ風味や味わいを楽しむというもので、極めて特別なタイミングで喫するお茶といえます。

かぶせ茶

おおよそ1週間から10日間お茶の木を藁で覆う(かぶせる)ことからこの名前となっています。

余談となってしまいますが、つねひごろ赴くスーパーで最も高い(大そうなことのようにお話していますが、1000円/100gです)緑茶がかぶせ茶なのです。

まあいいかと安易に買った安価な緑茶は、お話しにならないほど不本意な味だった記憶があります。

おそらく、寺町二条にある一保堂の緑茶にはかなわないと感じますが、お茶の香りや色あい、甘味・渋味・苦味で十分に満足をしています。

かりがね(茎茶)

緑茶の茶葉のを使って作られます。

薄めの緑色をしていますが、味わいも香りも上品です。

玄米茶

緑茶と炒った玄米を混ぜたお茶です。

玄米の香ばしい香りが特徴で、爽やかな味わいです。

抹茶

スイーツやさまざまなお菓子にも広く使われていますので、ご存じない方はおられないように感じます。

茶臼で挽いた粉状のお茶です。

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抹茶スイーツの一つを例示しますが、京ばあむは、京都駅のみやげ物売り場であふれています。

茶だんごと贅沢な飲み方

茶だんご

また横道に逸れてしまいますが、お茶のこととなると宇治の伯父さんを思い出します。

家に来られる際には、必ず茶だんごとかなり高価なお茶(どのような種類のお茶だったかは定かではありません)をお持ちになりました。

もう伯父さんもおやじも亡くなっていますので、時効ということで。

あの茶だんごが子どもの口には、どうもおいしくありませんでした。苦いのです。

おそらく抹茶が入っていて、上品な甘味ともちもちした味覚が宇治のおもてなしを凝縮していたと考えていますが、抹茶の苦味がその後、今となってもお茶好きであるこの身に苦手を引きずっています。伯父さん、すいません。

もう一つ、印象に残っている点があります。

この伯父さんのお茶の飲み方です。

急須に茶葉を入れ、お湯を注ぎ、頃合いの間を見はからった後、湯呑に淹れるのですが、この茶葉は、すぐほかす(捨てる)のです。

1回淹れたら終わり、何とも茶道楽とでもいうのでしょうか、贅沢なお茶の飲み方でした。

緑茶の甘味・渋味・苦味がわかってきた!

長年、緑茶に親しんでおりますと、お茶の味というものがぼんやりと理解できるようになります。

先にも安価なお茶は、それなりの味しかしないとお伝えしましたが、やはりけちらない方がいいということでしょう。

抹茶の苦味は未だに慣れませんが、どうも濃い目のお茶が好みとなって来ました。

年齢に依るのかもしれませんが、渋くて少し苦めの濃い緑茶にほっこりする味わいを感じるようになりました。

「粋」がるのではなく、つねひごろの感覚とでもいうのでしょうか。

お茶、よもやま話

番茶とほうじ茶は同じ?

番茶とほうじ茶は色合いや香り、味の点から同じと考えておりましたが、どうやら違いがあるようです。

ほうじ茶は、火にかけて焙煎(焙じる)したお茶です。淹れたお茶は、茶色です。

番茶は、新芽を刈り取った後の茶葉や、大きく育ってしまって硬くなった茶葉などで作られるお茶。関東では、焙煎しない緑色のお茶とのことです。

ところが、京番茶というカテゴリーがあるのです。

京番茶は、番茶にするような茶葉を炒って仕上げるとのことで、淹れたお茶はほうじ茶と同じ茶色です。

番茶とはいうものの、その製茶工程(焙煎する点)からもほうじ茶と同じ種類となります。

京都で番茶というのは京番茶を指している点が認識できておらず、ほうじ茶=番茶と同一視しておりました。

ほうじ茶と京番茶なら、ニアリーイーコルといえるのではないでしょうか。

京番茶は、非常に強い炒った香り(いい香りです)と独特の香ばしさがあります。

京番茶と茶葉

京番茶と茶葉

番茶には、地域差があって使う茶葉や製茶の方法が異なり、多様なお茶といえそうです。

禅寺は、抹茶とお菓子でもてなしていただける(有料ですが)

等持院にて、抹茶と芙蓉の月という和菓子

足利将軍家の菩提寺、等持院に何度となく訪れているのですが、行くたびにお茶をいただきます。

等持院限定焼き菓子、笹屋守栄の芙蓉の月が出されます。上品な甘味のあるお菓子です。

確か、妙心寺、大徳寺、龍安寺の塔頭でも抹茶と、それぞれ寺院限定のお菓子をいただいた記憶があります。

禅寺の庭は、美しく、方丈にどっかり座ると託されている庭の趣や謎を解こうと考えたりしますが、純粋に茶を喫し、お菓子をいただく、枯山水の庭の美に触れるということでいいのではないかと感じます。

龍源院の庭

大徳寺塔頭龍源院

お茶はさまざまに

ペットボトルの緑茶

コンビニやスーパーで販売されているペットボトルの緑茶、さまざまにあります。

例えば、お昼に弁当を買ってお茶も買う、またはお昼時間を利用した会議などでも弁当とペットボトルのお茶、サラリーマンの方たちのよくある日常ではないでしょうか。

この際のお茶は、弁当との相性が良いと感じられます。

いわゆるゴクゴクと飲めるすっきりとした味わいだからです。色合いも爽やかです。

ただ、急須に茶葉を入れ、お湯を注ぎお茶を淹れる味わいとはやはり異なります。

甘味・苦味・渋味が足りないのです。

つまり、緑茶でも京番茶でもペットボトルのお茶は、深みが足りないと感じています。

ふらりと散歩に出かけて、喉の渇きに対するペットボトルのお茶は、水分補給の格好の飲み物ですが、あれやこれやをいい出すと足りない要素があるのは当然です。

ついでにもう一つ嫌味をいいますと、お茶をラッパ飲みするのは未だに少し怪訝に思っています。

ラッパ飲みは行儀が悪いと躾けられた昭和世代です。

それならコップを持ち歩くのか?とかそのようなことを言い出すこと自体、あほとちゃうか?と思われる方もいらっしゃることでしょう。

世の趨勢を身に感じていくこと、これが大切と感じているつねひごろです。

お茶について、さまざまな点に触れてきました。
京都を訪れる機会がおありの方は、お茶を喫しながら禅寺の庭を眺めてみる、あるいは京料理とともに京番茶の芳香と味わいに接してみる、奥の奥があるこのまちでゆるりとお過ごしになるのもいかがでしょうか。