裸電球の灯に心躍らせた昭和の京都、春風情~夜店を懐かしむ~

夜店
夜店

夜店(よみせ)は、正月や縁日など神社の参道に露店が並び、こうしたお店を指します。

夜になると裸電球が灯されて日中とは異なった異空間とでもいうのでしょうか、幻想的でもあり魅惑的でもある風景が浮かび上がります。

例えば現在でも毎月25日に開催される天神さん(北野天満宮)の縁日では、夜店が出て多くの人たちで賑わいます。

京都のまちなかでは、地域や商店街の活性化といった目的もあり、定期的に夜店を開いているところもあるのではないでしょうか。

探せばきっと見つかるのでしょう、祇園祭を始めとする祭、三条会商店街の七夕夜市が思い当たります。

先日、ふっと何気なく、少年の日の記憶の中にある春風情を思い起こしました。

今回、通りに並ぶ夜店、昭和の風情を少し綴ってみます。

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心躍らせたまちなかの夜店

小学校の3年生か4年生だったでしょうか、おやじに一度夜店に連れてもらったのです。

たこ焼き、お好み焼き、わた菓子、お面を売るお店、金魚すくい、射的、あてもん(くじ引き)などのお店が並び、わくわくしながら通りを歩きました。

この夜店は、下立売通にあり、月のうち決まった日に開かれていて、確か智恵光院通と下立売通が交差する所から東に(堀川通に向かって)夜店が並んでいるようでした。

遠くから夜店あたりを見ると、ぼんやりとオレンジ色の靄(もや)が浮かんでいるようで、

子ども心に心を躍らせたことを思い出します。

少し気になり、調べてみるとありました!

京都市ホームページで上京区のページに「学区案内/待賢学区(たいけん)※上京区120周年記念誌(平成12年3月31日発行)から抜粋」に記憶に一致する夜店がありました。

下立売の夜店

『昭和の25年頃から,月のうち3の付く日,3日,13日,23日に,下立売通で夜店が開催されていました。下立売の黒門通から智恵光院通までの北側南側に沢山の夜店が並び,子供たちだけでなく大人も出て,結構な賑わいだったんです。花や盆栽を売っていたり,古本屋,お好み焼き屋,おもちゃ屋やら,いっぱいお店が並んでいました。特に興味深かったのは,飴細工の店で,ご主人のはさみ捌きが上手く,誠に楽しく作成していき,暫く感心して眺めていたものでした。また,金魚すくい鮒鯉等を釣ったりと色々と楽しむことができました。だいたい10円玉1個で用が足りたのです。今思えば庶民的な価格で皆が楽しむことができた時代だったのですね。先輩の方に聞くところによると,戦前は堀川通から夜店があったそうです。それが,いつの頃か,夏だけになり,そして歳月とともに,それもなくなってしまいました。子供たちが少なくなってきたのだから,仕方がないのかもしれませんね。でも,惜しい気がいたします。できれば,夜店を復活して欲しいものです。』(上記ページより引用)

3の付く日が夜店の日だったのですね。

この記事を目にした際は、懐かしさと伴に時空を超えて、夜店の並ぶ下立売通に降り立ったような気分となりました。

裸電球のオレンジ色が手招きするようで

裸電球

よくよく考えてみると、夜店が放つあの誘い(いざない)の魅力はなんだったのでしょう?

これは紛れもなく、裸電球の灯、あの淡いオレンジ色の光ではないかと考えています。

淡いオレンジ色で少し薄暗く、裸電球の灯りは、まさに幻想的で温かみがあり、「おいで、おいで」と手招きをしていたのです。

こうした温かみがもたらす落ち着き感から、お部屋で電球色の照明を取り入れておられる方も多いのではないでしょうか。

行ったらあかん!

3の付く日には夕方になるとそわそわし、遠くから夜店を眺め、家に戻っても行きたいといえず、非常にもどかしい思いをしました。

おやじやおふくろは、

「行ったらあかん!」

ときっぱりいいました。

「子どもが夜にふらふらするもんとちがう、家でかしこう(かしこく)しとけ」

でした。

当時では衛生上の問題もあって、無暗に買い食いするなということもありました。

それでも、あのオレンジ色のお誘いに行きたいと感じたものです。

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昭和の京まちなか風情

懐古することや懐かしむということは、あの頃は良かったなあとか楽しかったなあという想いに駆られてしまうことが多いように感じます。実際はそうではなかったかもしれませんが。

京都は、国際観光都市となり、世界的なまちへと進化しています。

もちろん素晴らしいことなのですが、昭和の時代、どこかどんくさいけれどもまちなかには京都特有の風情や人情がありました。夜店もその一つです。

いつの日にか、昭和は遠くなりにけりといわれるような時代となる前に、京まちなか風情を伝える必要があると感じています。

そろそろ筆をおこうと思いますが、

「節分に出世稲荷で買うてもろたカルメ焼きは苦かったなあ、子どもの口には合わなんだ」

カルメ焼き
ほろ苦いカルメ焼き

「京都駅のすぐ横、阪急の四条大宮駅のすぐ横に確か屋台のラーメン屋があったなあ」

「まちなかで聞く夜鳴きそばのチャルメラはどこか物悲しかったなあ」

と昭和の風情が感じられるようなさまざまな想いが湧いてくるのですが、

記憶の中に留めておくのが思い出ですので、その記憶に舞い込んで、ふらりと立ち寄ってみたいという気持ちを持ちつつ、ひとまず締めにさせていただこうと思います。

夜桜 春を楽しむ
春を楽しむ
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