幕末の剣士、沖田総司さんにすっぽん鍋を食べさせる京都幕末チャンネル
ごきげんよう。京都幕末チャンネルのお時間がやってまいりました!
最近あったかくなってきましたね。でも京都はまだまだ寒いですよ。
幕府も暮れなずむ午後のひととき、豪華なゲストをお招きし、好物でおもてなしして気楽なおしゃべりをしていただく、幕末フリーダムなこの番組、ご案内はわたくし幕末京雀。
本日も凄いゲストにお越しいただいております。
熱狂的なファンをもつ天才剣士、新選組の沖田総司さん!
新選組一番隊長、沖田総司さんの出演におハガキが殺到している
沖田さん、本日はお忙しいところ有難うございます。
くしゃっと笑ったお顔がなんとも良いですね。お腰の刀は菊一文字ですか?優美で反りのある2尺4寸2分、これで三段突きとかされたらたまりませんね。
今回おハガキが殺到しています。いくつかご紹介いたします。
「推してます。笑顔が大好き! 西陣の女子」
・・・どうです?心当たりおありですか?
・・・ない。
「いつも応援しています。 近所の女医」
・・・女医さんと仲いいんですね。しっかりした女性がお好き?お姉さんがおありでしたっけ。
「あなたの背中をさすりたかった。三条木屋町の女」
・・・これちょっと色っぽいですね。興味ない?ありゃ皆さんがっかりしますよう。
沖田さんこんなにモテるのに案外女性には奥手でいらっしゃる。
新選組一番隊組長、天然理心流の天才剣士、休みの日は壬生寺の境内で子供と無邪気に鬼ごっこ。
・・・最後のハガキの女は長州のスパイかもしれない?えっ、どうして。
・・・三条木屋町は池田屋、わたしは後半別室に。その背を見たやつは刺す
・・・?いやいや沖田さん、そんな血なまぐさくならなくっても。
あのね、いま京女のあいだでは浪士の皆さんの推し活が流行ってるんです。沖田さんの一挙一動に熱い視線をそそいでるんですよ。ああびっくりした。無邪気なお顔でいきなり殺気を出さないでくださいよう。
(広告)沖田さんの有名な三段突きを解説、緑寿庵清水の金平糖を取り寄せました
沖田さんの三段突きといったらなにしろ有名だ。一度突き、二度突き、三度の突きが神の速さで一気に押し寄せる。これがまた狭い屋内だの路地裏だの、まさに京都での斬殺向き。
池田屋襲撃で名を馳せて、新選組もますますお忙しくなったでしょう。
お疲れ直しに好物をさしあげたいとリサーチしたんですが、沖田さんって近藤さんの卵ふわふわみたいなエピソードがあまりないんですね。
実は金平糖って説がありまして、まあ最近の説なんですが、念のためご用意しましたよ。
百万遍にある名店、緑寿庵清水の金平糖。
弘化4(1847)年創業、平釜で蜜をかきまぜながら手間も時間もたっぷりかけてつくる、京都っ子自慢の絶品金平糖です。これ珍しいチョコ味、どうですか。
確かめるように金平糖をなめていらっしゃる。
金平糖は角があるから舌先に集中する感じになる。ナイーブな角の舌触り、ゆっくり溶けてほのかに甘い。沖田さんって確かにちょっとそんなイメージはありますね。
(広告)京都・大市のすっぽん鍋を沖田さんにふうふうさせるファン悶絶の萌え企画
そういえば先日近藤さんが言ってました。沖田は最近疲れてるんじゃないか。顔色もすぐれないし大丈夫かって。
それで何か滋養のあるものをと思案していたら、ごめんなさい、わたくしとつぜん或ることを思い出してしまったんです。
最初の屯所、八木邸隣の壬生寺で、新選組のみなさん放生池のすっぽんを捕って料理したというじゃないですか。あれホントですか?
あのですね、放生池のすっぽんは捕るものじゃありません。放すものです。
・・・美味しかった?ノー。ノー殺生。そこほんとダメ。放生池は捕まえた魚を放してやって功徳を積むんですから、そのすっぽん食うのはまじにやばいですって。
壬生寺のご本尊は地蔵菩薩。有名な壬生大念仏狂言は、仮面をつけて善男善女に仏の教えを伝える無言劇、そんな伝統ある寺の池の生き物を捕って食うなんて、お地蔵さまも怒りますよ。
・・・ああ、天才剣士がうなだれてしまいました。す、すみません。
ともかくわたくしひらめいた。滋養のある食べ物。沖田さんはすっぽんがお好きに違いない。
北野白梅町、京都の誇る大市さんのまる鍋(すっぽん鍋)をご用意しましたよ!
楽焼の土鍋で煮え立つ金色のスープ、どうです、おいしそうでしょう?
ささ召し上がれ。あつあつです。最後にお雑炊もできますよ。
ああ、嬉しそうなお顔をなさる。
天才剣士がすっぽん鍋をふうふう。絵が尊すぎて目がくらみます。
そういえば美食の徒、木下謙次郎先生によると、下手な料理屋はすっぽんに噛みつかれるのをこわがって首を真っ先に落としちゃう、でもそれだと臭みも出るし、よくないのですって。甲羅と首の間に刃先を入れて甲羅をはぎ取るのがよいのだとか。
「鼈(すっぽん)の頭を刎(は)ぬることがその咬害を虞(おそ)るる為なりとせば、是は料理人と鼈との決闘とも見るべきか。料理人は武器を以て丸腰の鼈にあたり、不意に其の首を切りたるものとも云い得べく、天下豈(あに)斯の如き非道なる料理法あらんや」
(木下謙次郎『美味求真』)
嚙まれたくないから首を落とすなら、料理人とすっぽんの決闘だ。丸腰のすっぽんの首をいきなり刎ねるなんて、この世にこんな非道な料理法があろうか。木下先生、怒ってらっしゃいます。
その点、大市さんはさばきかたも煮方も完ぺき。とろけるような美味でしょう。
さ、もっとふうふうしてください。
・・・丸腰のすっぽん、そんな相手も確かにいた。
・・・?沖田さん、箸をとめてまぁるい目になられました。どうかしましたか?
・・・すっぽんって共食いするんだよね?
・・・はい、そう聞きますね。仲間同士共食いして全滅とかね。沖田さん熱いお鍋で頬がピンクにほてってきています。口元が金色のスープにまみれて目がきらきらしています。
・・・これ、元気出るねえ・・・はい、大市さんの鍋を食べて元気の出ない人はおりません。お雑炊になさいますか?卵をお入れいたしますよ。卵は1個?・・・2個。
それでは皆さん、ちょっとコマーシャル入ります。沖田さん、はふはふしながら夢中で食べていらっしゃいます。
チャンネルはこのまま。引き続き京都幕末チャンネルをお楽しみください!
この記事を書いた人
入江 澪