地蔵盆の一番のお楽しみは~スリリング感満載、ふごおろし~

地蔵盆 ふごが降りてくる様子
出典 京都旅屋

天気予報によると来週あたりに梅雨明けと報じているのですが、いよいよ酷暑がやって来そうな気配です。

学生さんや子どもたちにとっては心浮かれる夏休みの到来となり、懐古主義に傾いた少年の日の思い出ではありませんが、子どものころ楽しみにしていたことなどをぼんやりと頭に浮かべています。

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地蔵盆とは

地蔵盆で吊るす提灯

お盆にお精霊さん(おしょらいさん)をお迎えし、8月16日の五山の送り火とともにお送りした後、夏の暑さも一服した翌週ないし翌々週の土日の2日間に行われるのが「地蔵盆」です。

ご存知の方も多いとは思いますが、京都では町内にお地蔵さんを祀る祠があります。お地蔵さんは顔が子どもに似ていることもあって、子どもたちの健康や安全に対する守護仏という存在でもあります。

お地蔵さんのイラスト

毎月24日がお地蔵さんの縁日で地蔵盆は8月23日、24日を中心に行われるのですが、おおむねその週の土日に固めて行われることが多いです。

地蔵盆を一言で表わすなら、「夏の子どもたちのお祭り」となるでしょうか。

私は、日ごろ見守ってくださるお地蔵さんへの感謝と子どもたちが健やかに育っていくようにという願いを込めた夏祭りといえるのではないかと感じています。

記憶をたどりつつ、おおまかに地蔵盆の概要をお示ししましょう。

・町内のちょっとした空き地や軒下、駐車場などにテントを張って提灯をつるし、ゴザを敷いて床几を置き、祠からお地蔵さんを移して据えるといった準備をしてからの開催となる。

地蔵盆 数珠回し イラスト
出典 京の地蔵盆(京都市文化市民局文化財保護課)

・1日目の朝一番に模造紙に書かれた予定表(プログラム)が張り出される。

・1日目、お坊さん(私の町内では、確か壬生寺のお坊さんでした)がお経を上げ、子ども

たちが輪になって数珠まわしをする。

・子どもたちには、お菓子、たこ焼き、焼きそば、ばら寿司、マクドナルドのハンバーガなどが振舞われる。

・お地蔵さんのテントでは、スイカ割り、輪投げ、ボーリング、ゲーム(トランプや将棋盤、オセロなど)が置かれ遊べるようになっている。(実際に遊ぶ子どもたちは少なかった感がありますが)

他にも地蔵盆についていろいろとご紹介したいこともあるのですが、小学生の頃だったでしょうか、地蔵盆で最も楽しみにしていたのが「ふごおろし」です。

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スリリング感満載のふごおろし

今回は、胸躍らせたこのふごおろしについてご紹介します。

ふごは「畚」でかごを指し、ふごおろしは地蔵盆の2日目、最後に最も盛り上がる福引を意味します。

ふごの中に景品と数字の札を入れて家の2階からふごを吊り降ろすという形で行われます。

もう少し詳しくお示ししましょう。

ふごおろしの様子 イラスト
出典 京の地蔵盆(京都市文化市民局文化財保護課)

・福引は、子ども、大人があり、地蔵盆の1日目にそれぞれの福引券が渡される。券には、数字が書かれている。子どもの福引の後に大人の福引が行われる。

・あらかじめ町内会長宅などに景品が陳列される。景品は、毎年変わる。

子どもの景品はおもちゃで高価なものが注目の的となるが、記憶では今でいうボードゲーム?「人生ゲーム」があったようにも(3000円程度のものが1等賞的な景品)

大人の1等賞的な景品は、湯沸かしポットのような簡易な家電製品(5000円程度までの景品)

・私の町内では、ふごは堅めの段ボール箱で箱には卍(まんじ)が記されていた。

地蔵盆 2階の窓からふごが降りてくる様子
出典 京都旅屋
地蔵盆 ふごが降りてくる途中の様子
出典 京都旅屋

ふごおろしによる福引は、地蔵盆2日目の午後から行われます。

家の2階からワイヤーが張られた1階へふごが吊り降ろされるのですが、ふごに景品を入れる部屋は電気が消され、何が入れられたのかわからないようにしてあります。

ふごには景品とともに数字札が入れられ、1階に降りて来た時にその数字が読み上げられるのですが、ふごに景品を入れる際のゴトンという大きな音数字の読み上げの瞬間がスリリング感満載で、ドキドキとしたものです。

「○○番!」と大きな声で読み上げられ、景品が見せられると集まった町内の子どもたちや大人たちから歓声が上がったり、がっかりの声が出たりと大いに盛り上がります。

これこそ、ふごおろしの醍醐味といったところでしょうか。

今も脳裏に残っているのは、ふごに景品を入れる際の「ゴトン」という大きな音=一番ええもん(景品)ということでしょうか。

この令和の世、地蔵盆でふごおろしをしている町内は極めて少ないと感じられます。

また、地蔵盆を行っていない町内や1日に短縮している町内などが増えていると耳にします。

少子化や町内における人のつながりが希薄となり、子どもたちに一役買ってやろうという気概を持った方がおられないことや町内の役員を避ける人たちが多くなったこともあるでしょう。

少し残念ですが今の風潮といえば、わからなくもない気がします。

懐かしさに感情移入しているのではありませんが、人の温もりや子どもたちと一緒に楽しむということに、地蔵盆を通じて復活させるようなこともあって欲しいと願っています。

今も記憶するふごおろしは、本当に楽しくハラハラ・ヒヤヒヤのスリリング感満載でした!

     

ご参考までに
京の地蔵盆(京都をつなぐ無形文化遺産)

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