今やおせちは、お取り寄せ?~懐古するのは、おふくろの味~
![おせち](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/osechi-1024x682.jpg)
おせちを懐古する
「ふり向いてばかりでは進歩がない、前を向いて進もう」といった未来志向型の思考に気を取られ続けてきました。
温故知新。変えることは不可能な過去には積み重ねてきた多くの経験や知識があって、これを訪ねることもいいと感じています。
一般に懐古主義的な発想には、「昔は良かった」という想いが心の基底にあるのかもしれませんがこれも悪いことではありません。
また不可解な方向へと深みにはまらないうちに今回のテーマをお示ししますと、季節柄ということもありますが、「おせち料理」に少し焦点を当ててみようと思います。
お取り寄せが主流?
現在、ご家庭でおせち料理を作っておられるのはどれぐらいの割合のなるのでしょう。
ご多分に漏れず私もお取り寄せのおせちでお正月を過ごしています。
たまたま届いた百貨店のパンフレットを眺めていますと、つねひごろの和風だけでなく洋風や中華風、高級料理店やホテルのものまでありとあらゆるおせちがあり、驚愕しています。
ページを繰って目の行き先は、料理の内容より先に値段を探してしまいますね。
いずれもお高い。10万円以上がザラにあります。
(広告)こっそり食した吉兆のおひとりさまおせち
吉兆、京都でも超高級料理店でミシュラン3つ星常連のお店ですが、一度行ってみたい、食べてみたいという密かな想いがありました。
一昨年の正月は、おふくろが入院中だったため初めて一人で迎えることになりました。
少し魔が差したというのでしょうか、おひとりさまのおせちを探していたところ、吉兆の一人用「和風 二段」なるものがあり、16,200円と値が張りましたが、目を瞑りながらパソコンの申込みボタンを押していることに気がつきました。
こぢんまりとした小箱に控えめな装いで盛り付けられた料理は、やはり品の良さと昆布だしがよく効いていて、「ごちそうさまでした」と本心からいえる味でした。
その固い紙製の小さな小箱(重箱)は、今も文房具として使っています。
![吉兆 おひとりさまのおせち](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/kiccho-osechi-1.jpg)
おせちは家の味、おふくろの味
ところで、ここでようやく懐古主義が顔を出すことになります。
かつてのおせちといえば、これはもうおふくろの味、引いては家の味、代々その家の女性が継承してきた味ともいえ、昔はどんな料理を食べてたかいな?とほおづえをつきながらぼんやりと考えています。
佐々木蔵之介さんと藤野涼子さんの「ミヤコが京都にやってきた!」(朝日放送テレビ)の最終回で、蔵之助さんが重箱の蓋を開けておせちが映し出される場面がありますが、あの際、「ここのおせちはちょっと上等やな」
と感じつつ、懐古主義に頭を覆われながら、おせちに想いを馳せたことを記憶しています。
(広告)京都のおせちの面影を追いかける
もうすっかり年老いたおふくろにおせちについて尋ねてみても、
「もうわからん・忘れた・どんなんやったかいな」
で、個人的に記憶しているおせちの面影を追いかけて料理と込められている想いを探ってみます。
お雑煮
![白味噌雑煮](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/zoni-1024x683.jpg)
白味噌仕立て(おふくろは、さらに少し砂糖を入れていた)甘いけれどもひつこくない。
丸餅
丸く円満に暮らせるようにという想い。
頭芋や子芋、大根などを入れるらしいですが、うちは丸餅のみ
大福茶(おおぶくちゃ)
![大福茶](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/oohukucha-1024x678.jpg)
白湯に小梅、昆布を入れたもの。
毎年飲んでいるのですが、調べて初めて名前がわかりました。
新年のお祝いと健康を祈る想い。
酢レンコン
レンコンを酢で漬けたもの。
単純に酸っぱいのとレンコンのシャキシャキとした歯触りが心地よい。
紅白のかまぼこ
紅白は、祝いの縁起物。
海老
うちは、天ぷらにしていました。
背が丸くなるまで長生きしようという長寿を願う想い。
数の子
水で塩抜きしていただく。
かつて、少し値が張る食材でした。
たたきごぼう
![たたきごぼう](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/tatakigobo-1024x683.jpg)
醤油、みりん、酢、すりごまで味付け。
ごぼうは地中に深く根を張ることから、家の安泰を願う想い。
子どもの頃は、ごぼうの皮むきの手伝いをよくさせられました。
![ごぼうの皮むき](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/gobo-kawamuki-1024x683.jpg)
包丁で皮を削ぐという感じでしょうか。
黒豆
「まめ」に暮らすとの想い。
ごまめ
![ごまめ](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/gomame-1024x683.jpg)
田作りとも。
田畑の肥料にも使われたことから、豊作を願う縁起物。
昆布巻
昆布は、「よろこぶ」につながるという縁起物。
鰊(ニシン)を昆布で巻きます。
棒鱈(ぼうだら)
![棒鱈](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/bodara-1024x683.jpg)
水分の抜けたカラカラに干された棒状の鱈を1週間ほど水に浸して戻し、甘辛く炊いた料理。
家庭で作ることは少なく、お店で買い求めることが多いです。
「たら(鱈)ふく食べる」から一年間食に困りませんようにとの想いを込めた縁起物。
なます
![なます](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/namasu-1024x683.jpg)
大根と金時人参(京人参)を細く切り、酢でしめた素朴な料理。
紅白からめでたさを示す縁起物。
玉子焼き
少しの出汁が入っただし巻き玉子。砂糖は入っておらず甘味はありません。
煮しめ
![たいたん(煮しめ)](https://kyoto-miyaby.jp/wp-content/uploads/2022/11/taitan-1024x683.jpg)
さまざまな野菜を炊いたもの=たいたん
筍のたいたん
蕗のたいたん
大根、金時人参、お揚げのたいたん
こんにゃくのたいたん
遠くにある記憶の箱を開けるような面持ちで懐古しつつ京都のおせちをご紹介しました。
この料理は、継承されてきた家の味やおふくろの味があり、ずいぶんと手伝いもしたことを想うと、今はそんな時間はないとお考えになるかもしれませんが、家族が揃っておせちを作ってみるのもいいのではと感じています。
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