デビッド・ボウイが涙した静寂~比叡山を借景に!正伝寺~

※記事は、2017年10月27日に訪問した際のコンテンツです。

京都のまちをぶらり散歩していると、まるで絵画のような風景と出会うことがあります。

京都の街並みや寺院がこうも美しいのは、四季折々の自然とまちを織り成す風情や建築物との調和がとれているからでしょう。

そうした絶景は、京都の随所に存在します。その中でも今日は、お気に入りの寺院の一つをご案内します。

正伝寺とは

本日向かう先は、京都市北区の西賀茂。

深い緑の中にひっそりと佇んでいるのが、臨済宗南禅寺派の禅寺「正伝寺」です。

正伝寺 入口の門

山門をくぐり、木漏れ日の中を進んでいくと、入母屋造りの方丈(本堂)が姿を現します。

まずはこの、静かな境内の中で圧倒的な存在感を放つ方丈で、散歩の足を休ませます。

国の重要文化財でもある荘厳な方丈は、伏見桃山城の遺構を移したものとされています。

室内の天井は、四方が丸く折り上がった「折上格天井(おりあげごうてんじょう)」となっており、この建造物がいかに格式の高いものであるかを伝えています。

方丈の襖絵は、狩野山楽の筆による淡彩山水画です。

重要文化財に指定されるほど貴重な山水画なのですが、これを間近で鑑賞することができます。

ぜひ、繊細かつ力強い筆使いを感じてください。とはいっても、現物がこうも露わにありますと、非常に気を遣いますが・・・。

また方丈の広縁の天井には、血天井があり、黒い斑点の模様が見られます。

これは関ヶ原の戦い前に、伏見城で割腹した鳥居元忠らの血痕といわれています。

正伝寺 血天井

近年、この血痕を実際に分析したところ、368年以前の人のものであることが、証明されたとのことです。

城を守り難渋、苦渋した先人たち。

彼らが無念にも果てた廊下を、天井に用いた理由は、一体何なのでしょうか。

供養、もしくは平和へのメッセージだったのかもしれません。何度散歩で訪れても心が震えるのを禁じ得ません。

さて、落ち着いた空気の中、さらに散歩の足を進めて行きましょう。

この方丈の前には、禅寺らしいわびさびの風格ある庭園があり、観光に訪れる方も少なく心鎮めて鑑賞することができます。

この庭の枯山水は、美しさもさることながら、絵画を鑑賞しているようでもあります。

正伝寺 方丈前の庭

白砂の上に置かれているのは、石ではなく、丸々と刈り込まれた皐月の木なのです。

塀の上に見えるのは、遥かにそびえたつ比叡山。これを借景に、優美な空間を作り出しています。

春夏秋冬、晴れの日も雨の日も、どの時刻も、そしてどの角度から眺めても、画になる空間。まさに、自然と人の手が作り上げた、芸術だといえます。

京都の地がもたらす静寂の中、広縁に座してこの眺望を目にし、じっくりと沈思黙考するのに最良といえるでしょう。

正伝寺 方丈前 比叡山を借景にした眺め
正伝寺 方丈より遠くに比叡山を望む

一つ、こんな逸話が。

英ロック歌手、故デビッド・ボウイさんは1979年12月、ある酒造会社のテレビCMの撮影で京都を訪れました。

京都通のボウイさんが指定したのは正伝寺だったとのことです。

非常に繊細で純粋な方だったとのことで、撮影中ボウイさんは庭園を見つめ、心に響く静寂さと比叡山を借景にした庭の前で涙を浮かべていたそうです。

正伝寺のこの静寂、私も震えるほど感じ入りました。

送り火 舟形

穏やかな時間を過ごした後、もう少しぶらり散歩を続けたいなと感じる時、この周辺では、送り火の船形や奇才北大路魯山人のお墓があり、ふと立ち寄るのも一興です。

ゆっくりとした時間の流れている京都。その、緑豊かな風景を楽しみながら、そぞろ歩きをしてみるのも、趣深いのではないでしょうか。  

正伝寺
〒603-8847 京都市北区西賀茂北鎮守庵町72

参考URL
http://shodenji-kyoto.jp

京まちなか散歩道 比叡山を借景に!正伝寺より引用、再編集