奇跡を願う、人の心~善峯寺と鎌達稲荷神社のお守り~
京都の街中にある多数の神社仏閣。
現代では参拝ブームも相まって、訪れた方がお守りをいただく様子は、すっかり日常の風景となりました。
ひと口にお守り、といってもそのご利益は実にさまざま。
縁結びや諸願成就だけでなく、玉の輿や美人祈願など、その社寺に特有のものも増えています。
今回ご紹介するのは、その中でも特に珍しいご利益を持つお守り。
神仏に自身の運命をゆだねると決めたとき、こちらの記事に載せたふたつのお守りを思い出してみてください。
「善峯寺」の「おちないお守り」
ひとつめのお守りがいただけるのは、京都市の西に鎮座する寺院「善峯寺(よしみねでら)」。
桜や紅葉、アジサイの名所として知られており、盛りの季節には境内が華やかに彩られます。
善峯寺が授与しているお守りで、いっとう目を惹くのが「おちないお守り」と呼ばれるもの。
ご利益は「息災安穏(そくさいあんのん)」と記載されているため、一見しただけだと「おちない=受験合格などのお守りではないのか?」と疑問に思ってしまうかもしれません。
この「おちないお守り」のご利益は、ある災害のエピソードと結びついているのです。
大災害におきた奇跡
関西で長く暮らす人々にとって、未だ根強く記憶に残る「阪神・淡路大震災」。
その被害は凄まじく、日本の歴史に残る大災害のひとつとなりました。
ニュースなどで阪神・淡路大震災を振り返るとき、必ずと言っていいほど流されるのが「高速道路の高架から、ギリギリ落ちなかったバス」の映像。
間一髪の状況から乗客と自身の命を守った運転手は、あるお守りを持ち歩いていました。
そう、この方が持っていたお守りこそ、後に「おちないお守り」と称されるようになる、善峯寺のお守りだったのです。
このお守りは、本来「当病悉除(とうびょうしつじょ)」のご利益を持つものなのだとか。
しかし震災後に前述のエピソードが広まると、少しずつ「おちないお守り」として入試合格や交通安全の願いを込め、求める方が増えてきたのだそうです。
以降、善峯寺はこのお守りを「当病悉除」と「息災安穏」の2種類に分け、後者を「おちないお守り」として授与するようになりました。
大災害から命が助かったのは、もちろん運転手さんの危機意識があってこそ。
けれどその奇跡の後押しを、このお守りが担ってくれたのかもしれませんね。
(広告)「鎌達稲荷神社」の「サムハラ守」
ふたつめにご紹介するのは、まさしくその「奇跡」がご利益とされるお守り。
こちらのお守りは「鎌達稲荷神社(けんたついなりじんじゃ)」という、静かな神社でいただくことができます。
お守りの名は「サムハラ守」。
画像をご覧いただければわかるように、「サムハラ」は漢字ではありません。
これは漢字で表記することができない「神字(しんじ)」という字であり、この神字そのものに強力な力があると伝わっています。
ご利益は「災難除け」や「勝運」。
さらにもうひとつが、先ほども述べた「奇跡を招く」というものです。
奇跡を求めて訪れる参拝者たち
鎌達稲荷神社はふだん社務所に人がおらず、参拝者も少なめ。
ですが口コミで着実に広まっており、このサムハラ守を求める方が1人また1人と足を運んでいるようです。
山吹色のお守りに金の糸で刺繍された「サムハラ」の神字は、いかにも奇跡を起こしてくれそうな佇まい。
現状を打破する奇跡を願う──きっとこのサムハラ守は、そんな方のよりどころとなるお守りなのでしょう。
(広告)お守りを通して見えてくるもの
神社仏閣への参拝は、己の願いをいま一度見つめ直す行為。
そしてお守りは、肌身離さず持つことで、見るたびにその願いと想いを新たにするものでもあります。
お守りを通して神仏が見つめてくるのは、日ごろの自身の行い。
その行動が神仏のお眼鏡にかなったときこそ、奇跡は起こるのかもしれません。
善峯寺
〒610-1133 京都府京都市西京区大原野小塩町1372
鎌達稲荷神社
〒601-8466 京都府京都市南区唐橋西寺町57