名著「こころ」~先生と「それから」の長井代助との共通点~
三角関係がテーマ、こころとそれからの底流にあるものは?
先日、離れて暮らす息子(もうすぐ高3)と電話で話していた時のことです。
新型コロナウイルスの関係で、休校になっている現在、おそらく1カ月は主に家で過ごさなければならないとのことで、どうすんの?ということが話題でした。
「クラブは?」
「クラブもない、高校からは自宅待機するようにいわれてる」
「宿題とかは?」
「出てるけど、すぐにやらなあかんこともない」
「ほな、どうすんのん?」
「考えてる」
「お前、本は読んだんやったけ?」
「この間、教科書で読んだ。こころ」
ということで、どうやら息子は国語の授業で漱石の「こころ」を読んだようでした。
それも、教科書に掲載されていたのは最後の章、「先生と遺書」のみ。
「おとうさんなあ、大学入ってからよう本読んだけど、高校の時読んだ本は、唯一こころだけやねん。おとうさんも国語でこころの「先生と遺書」読んだわ」
そうなんです。私も高校時代に「先生と遺書」だけの章が教科書に載っていて、読書感想文を書いたような。
友人に勧められて、最初の章「先生と私」から読もうと思って本を買い求めました。
「漱石はなあ、三角関係がテーマになってる本がようけあんねん、こころもそうやろ」
「それでも、先生は友人裏切るようなことしたんやし、ちょっとひどいやろ」
多感な年ごろの息子は、やはり何か感じるところがあったようでした。
実は、私、文学部でもないのに、大学に入ると同時に漱石を読みあさりました。未完の絶筆「明暗」まで。他にも作家研究ものも多く読みましたし、当時漱石に傾倒していたことを覚えています。
(広告)そうです、松田優作主演で「それから」が映画化されて、ふだん映画を見ることがなかった私がわざわざ見に行きました。
「長井代助」の高等遊民という生き方、憧れましたねえ。
今となっては、ええ大人が働きもせず、思索や趣味にふける?なにを甘えてんねん、ですが。
ところで、
「休校の間、ちょっと本でも読んでみるか。漱石の本やったらおもしろいのあるで」
息子に「それから」を勧めてみようかと思いましたが、ちょっと早い、大学入ってからでええと思い、やめました。
「三四郎なんか、ちょっぴりせつないで」
ふーん、なんか詳しいやんといった雰囲気でしたが、読もうと思ったのかどうか。
私は、やはり漱石ではなく漱石先生ですね。もう一度、「吾輩は猫である」から読み直してみようかと思ったりもするのですが、書棚にある文庫本の字が小さすぎて読めない(見えない)のです。
老いたようです、こんな伏兵があったとは。
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