うつろいゆく季節の中、春風情を彩る花~イチハツと牡丹~
先日、堀川沿いを少しぶらりんしたのですが、八重桜も終わりに近づいている風景が眼前に広がりました。
季節は、うつろいゆくと感ぜずにはいられません。
桜の象徴ともいえるソメイヨシノが絢爛に咲き誇り、少しせつなさを伴ってはかなく散った後に八重桜が咲きます。
ふと想いついたのですが、春は紙芝居のように次々とさまざまな花たちが現れては消えていく、そんな風情が感じられます。
京まちなか春風情を想いながら、今回上御霊神社のイチハツと本満寺の牡丹を観賞することにしました。
(広告)上御霊神社のイチハツ
相国寺の北、地下鉄鞍馬口駅のほど近くにある神社です。
上御霊神社は、応仁の乱勃発の地として、戦国時代という乱世の幕開けに繋がる舞台です。
また、時代は遡りますが平安時代桓武天皇の弟早良親王は、藤原種継暗殺に関与していたと疑義をかけられ、食を絶って非業の死を遂げましたが、親王の鎮魂も含めその御霊(ごりょう)を祀っています。
この地は、御所から東北方位に位置し、皇城表鬼門を封じる神社とされています。
また、御霊祭では、御所の朔平門前で3基の神輿が差し挙げられます。ちょうど舞殿に、神々しい神輿が置かれていました。
神社の南水路を中心に早咲きのアヤメの一種イチハツが、見ごろを迎えていました。
イチハツは、アヤメのなかでもいち早く咲くことで「一初」とも記されます。
気品のある紫の花が麗しさとともに美しく、一面に咲くさまは心が自然と心優しく、癒されます。
寺町通をぶらりん
上御霊神社から東に向かい、寺町通を本満寺まで下がります。
額縁門で有名な天寧寺の遠景には、絵画と化した比叡山が見えます。
さらに下がって、西園寺の門前を通り阿弥陀寺に行きます。
阿弥陀寺
織田信長の墓があることで知られる寺院で、織田家に仕えた清玉(せいぎょく)上人が創建した寺院です。
信長、信忠の本廟です。写真の右側の墓石が信長とのことです。
本能寺の変後、清玉上人は信長の遺骸を収容し阿弥陀寺にて墓を建て供養します。
その後秀吉は、天下を掌握するべく権力者としての示威として信長の葬儀を行うに際し、上人に信長の遺骸の引き渡しを求めますが、上人は頑としてこれを断ります。
仕方なく秀吉は大徳寺で大々的な葬儀を行い、香木にて2体の信長像を作り、1体を火葬します。
後になって秀吉は寺町の手狭な地へ阿弥陀寺を追いやりますが、これはまさしく清玉上人に対する恨みに対する意趣返しであり、執念深さが感じられます。
大徳寺総見院の墓とは全く印象が異なると感じました。近くには、森蘭丸の墓もありました。
本満寺の牡丹
見事なまでに咲き誇るしだれ桜に逢うタイミングが難しいのですが、おそらく訪れた方はどなたもため息が出ると思います。
2020年3月の記事をご参考までに。
今回は葉桜となったしだれ桜を通り過ぎ、力強く咲く牡丹の魅力を感じることにしました。
牡丹は、花自身が大きく色彩鮮やかで迫力ある美といえます。
境内には、八重桜と牡丹のコラボレーションや桜吹雪で散った桜の葉が地面に敷き詰められ、絵画的な春風情も観られ、想わず感嘆の声を上げるほどでした。
風薫る皐月へ
春の花は、さまざまな色合いや彩りが鮮やかで素晴らしいが、4月下旬頃には新緑が爽やかで陽に照らされた緑色が青空とコントラストを織り成し今更ながらに自然美を感じます。
風薫る皐月へ、季節は淡々とうつろいます。