どこか切なさを感じるまち、京都を舞台にしたドラマから(後編)

京都の秋風情

「秋愁い」という言葉があるように、京都に秋が訪れ始めるとあちこちで切なさのかけらを見つけるようになります。

涼やかな風の中をまちなかぶらりんするのも趣があるのですが、かつて観たドラマや映画に接することで、当時感じた想いに再び包まれるのもどこか癒されるものです。

京都を舞台にした作品を私的な目線ではありますが、前編に引き続き後編としてご紹介します。

京都人の密かな愉しみ Blue 修業中

放送:NHK BSプレミアムドラマ 

出演者:林遣都、相良樹→吉岡里帆、矢本悠馬、趣里、毎熊克哉

京都の四季を背景にしつつ、まちの行事やならわしを散りばめながら5人の若手職人たちの喜び、苦悩、夢を描く作品です。

完結編として「門出の桜」では、京都の季節を色濃く映し出す春の桜をテーマにしつつも、5人の若者が大きく巣立っていく姿に出逢いと別れの切なさが感じられ、この後の彼らの人生模様をさらに追い求めたい気持ちが最後に残ります。

今をときめく俳優たち林遣都、吉岡里帆、矢本悠馬、趣里、毎熊克哉がずらりと並び、ドラマでの彼らの成長と重なるようにその活躍を今後も期待したいと多くの方たちが感じていることでしょう。

印象的な場面の一つとして、「祇園さんの来はる夏」の中で祇園祭宵山を楽しみにしていた釉子(吉岡)なのですが、失恋するシーンがあります。

美しい浴衣姿に大泣きしている様子を観た際、思わず「かわいそうに」と我知らず言葉が出たのもこの作品に対する俳優陣の心意気を感じることができたからと得心しています。

個人的には、さらに続編を観たいと思います。

カムカムエヴリバディ

放送:NHK 連続テレビ小説

出演者:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈、森山良子、オダギリジョー

ドラマは、ラジオ英会話をテーマに繰り広げられ、祖母から孫にかけて100年のさまざまな人間模様が描かれます。

京都が舞台となるのは、川栄が演じるひなたの登場からとなりますが、仕事や恋愛といった人生の試練に立ち向かいます。

朗らかで前向きなひなたの姿と京都のまちなかの風情が調和して、一層ドラマを引き締めています。

「カムカムエヴリバディ」と聞いた際、これはなんのこっちゃ?でしたが、じっくりと観ているうちに人間の情の濃さ、家族の絆、さらに臆することなく強く生きていく3人のヒロインについて感動せずにはいられませんでした。

京都編で大月さんの家がどこなのか推測しましたが、やはりドラマですので結局は謎とはなりました。

商店街や賀茂川、映画村といった京都のふだんのまなちなか風景も違和感のないどこか心に沁みていく風情となっていました。

少し切なさ漂うトランペットの音色とともに「On the Sunny Side of the Street」がこのドラマの底辺に流れていて、英会話(英語)もこのドラマの基底となっていますが、川栄の発音は流暢でさらに心地いい発音が印象的でした。

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鴨川食堂

放送:NHK プレミアムドラマ

出演者:忽那汐里、萩原健一、岩下志麻

原作:柏井壽

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雑誌の一行広告「思い出の食、捜します」に誘われて訪れる依頼人たちの食を、鴨川こいし(忽那)と鴨川流(萩原)親子が再現していくドラマです。

人には、思い出したくないけれども自然と懐かしさや切なさが入り交ざって心に浮かぶような思い出がありますが、この親子のどこかちぐはぐなやりとりを通じてだんだんと思い出の食が出来上がって行きます。

肉じゃが、とんかつ、ナポリタン、鍋焼きうどん、ハンバーグ、ビーフシチュー、のり弁、チャーハンとつねひごろにいただく食をテーマに、依頼人の心情や境遇に寄り添う点も魅力的な内容となっています。

ドラマでは、東本願寺近くにひっそりと建つ食堂ということで架空の世界なのですが、あまりにも人情あふれた、また京風情があちこちに感じられることから現実に存在するのではと感じさせるドラマでした。

あるはずがないのに、どこか衝動を感じたのでしょうか、実際に東本願寺界隈を訪れてしまったことを記憶しています。

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壬生義士伝

日本映画:松竹

※渡辺謙主演のテレビドラマもありますが、こちらでは映画を紹介します。

出演者:中井貴一、佐藤浩市、中谷美紀、三宅裕司、夏川結衣、村田雄浩

原作:浅田次郎

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幕末・新選組というと、「燃えよ剣」をはじめとする副長土方歳三に焦点を当てた小説や論評、映画などがさまざまにあります。

死をかけ最後まで幕府に忠義を尽くし、滅びの美学を体現した生き方が今も支持される所以です。

一方で守銭奴と蔑まれながらも家族への愛を尽くし家族のために人を斬る、こうした武士が主人公の吉村貫一郎です。

南部盛岡藩を脱藩し、家族を養う金を得るため新選組に入隊します。

新選組でも斎藤一や沖田総司は驚くほど強い剣の持ち主でしたが、吉村も引けを取らない剣士(義士)でした。

この作品は、吉村を軽蔑しながらも心の底では敬意を払っていた斎藤一(佐藤)の回想に終始しますが、家族のために生き武を貴ぶ吉村の生き方に対して、幕末を過ぎて明治の時代の中を生きる身を考えると我が身を恥じていたのかもしれません。

中井貴一と佐藤浩市が圧倒的にカッコイイ映画です。

二人とも二世俳優という同じ境遇ですが、いわゆる七光りに甘んずることなく体当たりで演じている凄みが感じられます。

中井が家族との別れの際に子ども抱きしめるシーンには、グッとくる切なさが心に響きます。

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五番町夕霧楼(映画1980年公開作品)

日本映画:松竹

出演者:松坂慶子、奥田英二

原作:水上勉

かつて京都の西陣、千本中立売より南西の地に五番町遊郭がありました。

丹後の貧しい家に生まれた夕子(松坂)は、五番町夕霧楼に売られこの地で働くことになります。

偶然にも幼友達の青年僧正順(奥田)と廓で会い、互いに魅かれあった二人は逢瀬を重ねますが、夕子に指一本も触れることなく幼友達との会話を楽しんで正順は帰って行きます。

夕子との関係が寺に知られてしまったことや寺の長老の堕落した姿に正順は失望と絶望により悲観します。夕子との最後の逢瀬の後、鳳閣寺の炎上とともに夕子との純粋な愛も成就させることができなかったということが悲恋だけでなくあまりにも悲しすぎる物語となっています。

この作品の印象としては、松坂慶子の眩しすぎる美しさ吃音の障がいを持った修行僧の奥田英二の純朴さが怖いほどの役者魂を感じさせます。

淫靡な部屋での会話、二人でいるときだけに訪れる束の間の安らぎ、悲哀と切ない恋愛、鑑賞後に少なからずやるせなさが残ります。

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最後に「どこか切なさを感じるまち、京都を舞台にしたドラマから(前・後編)」、いかがだったでしょうか。

今回は、切なさを追って京都を感じてみました。

また異なる側面から京都を舞台にしたドラマをご紹介できればと思います。

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