どこか切なさを感じるまち、京都を舞台にしたドラマから(前編)
あまたある京都を舞台にしたドラマや映画、小説の中には、どこか切なさを感じる作品があります。
京都が舞台となる、あるいは京都出身の俳優さんが出演していると、案外京都人は見逃さずにしっかり観てドキマギしているようです。私もそのひとりです。
今回、再び想いを馳せることができる動画配信サービスを通じ、京都を舞台にした作品を私的な目線とはなりますが、まず前編をご紹介します。
ミヤコが京都にやって来た!
放送:朝日放送 テレビドラマ
出演者:佐々木蔵之助、藤野涼子、三林京子、松本若菜、結木滉星
空吉(佐々木)と京(みやこ:藤野)の親子が感覚・感性が微妙にずれつつも、親が子を想い、子が親を想う点が心に響く作品です。
京都の名所やまちなかのならわし、町家の風情もあちこちに散りばめられていて、訪れたくなるまちの風景が描かれています。
鴨川の飛び石でふたりが話す場面は、親子の絆が強くなる気配を映し出していますが、北山を背景に交わされる会話がちょっぴり切ないです。
佐々木さんの実家、佐々木酒造さんは、昔ながらの造り酒屋で、界隈は「出水(でみず)」といわれるところです。
この出水なのですが、「京都坊目誌」によると湧水がありたびたび浸水したと記載されています。
おそらく、豊富な地下水が酒造りに適していたのでしょう。
少し驚嘆したのは、佐々木さんと同じ中学校に通っていたことですが、全く接点はありません。
作品中、さすがに佐々木さんの京都弁(京ことば)は違和感なしで、ネイティブでした。
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放送:テレビ大阪 テレビドラマ
出演者:近藤正臣、木村文乃、古舘寛治、玉置玲央、徳永えり
デザイナーの加奈(木村)が東京から長期出張で大阪の支社に通うため、京都に住む大叔父の茂(近藤)のところに短期滞在する所から始まります。
茂から何かと用事を頼まれ、加奈は自転車で京都のまちをあちこち巡る中でいろいろなお店が紹介されます。
「観光地に一切行かない京都案内」と「住んでいる人しか知らない京都」をコンセプトに静かでゆるい時間の流れにつねひごろの京都風情とほっこり感が漂います。
京都での滞在を終え、加奈が東京に戻る際に交わされる茂との会話にほんのちょっぴり切なさが感じられます。
近藤さんは、京都出身でさっぱりした人柄とはっきりモノを言うキャラクターが人気を呼び、さまざまな番組等で活躍されています。
この方の話す京都弁(京ことば)も佐々木さんと同じく違和感なしのネイティブです。
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(広告)日本映画:東映
出演者:宮沢りえ、加瀬亮
原作:浅田次郎
(広告)オリヲン座からの招待状、鉄道員(ぽっぽや)に収録されている短編小説です。
舞台は、京都の西陣。
昭和30年代、先代の館主豊田松蔵(宇崎竜童)が亡くなり、弟子であった仙波留吉(加瀬)が志を引き継ぎ、先代の妻トヨ(宮沢)とで映画館を守り続けてきました。
高齢となったふたりが体力的にも経営的にも継続することが困難となったこの映画館を閉館するに際して、これまで愛し親しんだ地元の人たちやゆかりの人たちに最後の興業となる旨の招待状を送ります。
これまで、貧乏や陰口に叩かれながらも、映画の灯を灯し続けた弟子と先代の妻との優しさあふれる愛に感動と一抹の切なさを感じさせる名作です。
千本通は、昭和30年代、銀座に匹敵するほどの賑わいを見せていたと昭和1桁世代の亡きおやじから聞いたことがあります。
銀座をぶらりと歩く銀ブラに対して千本通をぶらりと歩く「千ブラ」という言葉もあったとのことで、当時は多くの映画館や劇場がひしめいていたとのことです。
この作品は、京都や西陣の風情を色濃く表し、千本今出川に「西陣オリヲン座」が現実にあったのではと感じさせるリアリティが感じられます。
せつなさを感じつつ感動するのは、仙波留吉の最終興行に際してのあいさつ。
「えー、本日は西陣オリヲン座謝恩最終興行にお越し下さいまして、おおきに、ありがとうさんです。・・・あの、ほんまはできることならこの映写室で、フィルム回しながら死にたい思いでしたんですけど、こないなはんぱなことになりまして、えらすんまへん」
最後の「えらすんまへん」という言葉に職人気質のような頑固さと閉館してしまう我が身への叱責と湧き上がる罪の意識のようなが情が感じられ、こよなく映画を愛し続ける映画人の心意気がひしひしと伝わってきます。
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(広告)映像化されていませんが、最近読了した書籍の中で最も京風情と祇園という花街が綴られていて、淡く静かな悲恋と切なさが感じられる作品をひとつご紹介します。
余談となってしまいますが、京都検定試験で五花街のことが頻出します。
試験対策も兼ねてこの著書を読むことで五花街の行事やしきたり、また踊りや流派、開催される催しが体系的にわかるようになり、ただひたすら暗記しようとしていたことに理解が追い付いてきます(バラバラに覚えていたことがつながります)
志賀越みち(書籍)
著者:伊集院静
端的にいうと、大学生と舞妓はんとの実らぬ悲恋がテーマの物語なのですが、京都の季節感とこれに付き添うかのような花街の風情が描かれています。
舞妓真祇乃の大人へと駆け上がる姿は素晴らしく、主人公の東大生津田雅彦との別れを覚悟し、祇園で生き抜いていく強い女性として感じられます。
主人公の東大生、津田雅彦は朴訥で爽やかな青年なのですが、今一つ真祇乃ほど大人への階段を登り切れていない、育ちの良い「ぼん」が少し残念な所です。
真祇乃との別れの際、ひとつ頬をぶたれるのですが、雅彦はその意味が理解できたでしょうか?
ここまで、4つ作品をご紹介しましたが、このまま続けると内容がまた冗長化してきますので、前編はここまでとさせていただき、後編にて新たに5作品をご紹介いたします。
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