組織のぬし(主)とリーダーは違う!~直近上位の人事異動~

一言もの申す

組織硬直という弊害、直近上位の人事異動

主(ぬし)はいらないと思っています。

これは、いわゆる人事政策、平たくいえば人事異動のことなのです。企業や官庁でも同じようなことがあると思うのですが、一例をご紹介しましょう。

大学だけでなく企業や官庁に入社し、初めて配属された部署が財務課財務係であったとします。はじめは、一般職と(簡潔にいえば平社員)で下を向いてコツコツと上司のいうこともよく聞き、ひたすらに仕事を覚えようと努力します。

これは、非常に素晴らしい仕事にひたむきな社員であると想像がつきます。

3年を経、4年ともなると係を回せるぐらいのベテランとなって、上司や同僚からも信頼を得て自信を持って仕事に臨む姿が思い浮かびます。

ところがです。同じ部署で同じ仕事を5年も経験すると、財務課財務係の仕事について基本的知識や技量は身につけたということで、人事異動で他の部署へという流れが一般的な人事政策といえるのではないかと考えます。

しかし、多々あるのが、この社員は有能で他部署に異動させると仕事が滞る、余人をもって代えがたいとなると、さてどうしようとなります。

異動の対象時期ではあるが、特例的にもう1年居てもらおうという選択も人事課が考えることなのですが、その後はどうするとなると、奥の手を使うことになるのです。

直近上位への異動。つまり、この優秀な社員を係長に昇進させ、同じ部署に留めることにするのです。平社員としての在職期間は5年ですが、係長としてはこれから始まるので、また5年程度の期間をこの職場に置くことが可能です。

組織では、基本的に直近上位への異動を禁止とまでいかなくとも、特段の事情がない限り認めていないことが多いのですが、現実は安直な手法・政策としてよく行われているようです。

(広告)

人事政策は、「人を育む」ことも基本ですから、この有能な社員が異動しても業務が硬直化あるいは停滞しないように余人を育てておく必要があるのです。

で、この財務係長は次にどうなると思いますか?

彼は、さらに優秀さを発揮し、仮に5年経っても、他部署に行ってもらっては困る存在になるのです。人事課はどうしますか?

財務係長のこの社員を今度は、財務課長へと直近上位の異動を行うのです。

もう財務課の業務のことは、彼に任せれば間違いない、財務課は安泰だと人事課は安心することでしょう。

ただ、人事課はここで大きな誤り(判断ミス)をしていることにうすうす気がついていると思います。

そうです。この優秀な財務課長は、財務課という組織の主(ぬし)と化してしまっているのです。

謙虚に仕事をするという姿勢は、もう忘れてしまっているでしょう。また、課員は、みな彼の顔色ばかり見ることになるでしょう。

これこそが、直近上位への人事異動の弊害です。

「人を育む」ことをおろそかにした結果、いずれ異動を迎えるであろうこの財務課長の代わりが居ないことと、財務の仕事しか知らないこの財務課長の次の行き先が無くなってしまうという残念な状況が将来を見据えた先にあります。

組織で仕事をする以上、さまさまな部署を経験することは必要です。概ね3部署を経験すると自分の得意な分野の仕事も見えて来ますから、その時点でかつて居た部署に係長や課長として戻ることが望ましいでしょう。

主やお局はいらない、安直な直近上位への人事異動は、正常な人事政策とは全く言えません!