川谷拓三をさがせ~「仮面の忍者赤影」と東映京都の大部屋俳優

川谷拓三

NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の大部屋俳優たちが魅力的

NHK朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で注目の東映太秦映画村は、東映京都撮影所のセットの一部が公開されて出来たテーマパークです。東映京都撮影所は泣く子も黙る時代劇の大柱。朝ドラに登場する伴虚無蔵や五十嵐文四郎もここの大部屋俳優という設定で、これが何とも魅力的な人たちです(作品上は東映でなく「条映」) 

大部屋俳優は端役ですが、ここからスターになった人も少なくありません。その一人川谷拓三が無名時代「仮面の忍者赤影」に出ていたのは比較的有名な話かもしれません。「仮面の忍者赤影」は1967~68年制作の特撮時代劇で、赤影・青影・白影という忍者たちが巨大な悪と戦います。

Wikipediaには第1部金目教編第11話と第3部根来編第28話に出ているとありますが、いや今まで気づかなかった。大部屋俳優に関心が向いたこの機会、お姿拝見すべく、ともあれ第11話をまわしました。 

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「仮面の忍者赤影」を見ながら大部屋時代の川谷拓三をさがす

邪教「金目教」で日本を支配しようとする甲賀幻妖斎と幹部の霞谷7人衆。7人衆のひとり鬼念坊鉄車は赤影に化けて犯罪を繰り返します。道ゆく数人の男が、どこからともなく襲撃され、誰だ?と周囲を見回す。見つけました、この中に眉の濃い川谷拓三の顔。おお、拓三、と喜ぶ暇もなく拓三たちはその場でばたばた斬り殺されてしまいます。

あっけない、これが大部屋俳優か。そう思いながら続きを視聴。古寺に籠る赤影一行のもとに捕り手の役人たちが押し寄せます。

「都を騒がす不逞の輩、もはや逃れられはせんぞ!」

いっせいに鉄砲を構える捕り手たち。右端で拓三も鉄砲を構える。拓三、お前生きていたのか。捕縛された赤影の横を人相悪く拓三が歩きます。

さてこのあと牢屋のシーンを挟み、下忍ふたりが幻妖斎を警護し見張りをしています。目元以外は黒布で覆われた下忍ですが、この太い眉は、まさかの拓三。

うーむ、だんだん感じがわかってきたぞ。しかしその直後、幹部とともに幻妖斎のもとに参上したふたりの下忍の中に拓三の眉は見えません。なんたる神出鬼没、これは完全にウォーリーをさがせ。

この第11話はクレジットに川谷拓三の名が登場しますが、こうなるとクレジット無しでももしやと思うのは人情でしょう。続く第12話を前のめりにまわします。

鞍馬の白雲行者が不吉な予言をして去った後、奇怪な病に倒れる将軍義昭。人々が心配する部屋にひとりの武士が入ってきて行者の件を報告します。やけにきりっとしているが、その顔は懐かしの拓三。ああ、会いたかったよう。

つづくシーンで、赤影たちの部屋の屋根裏にひそむ下忍。幹部の闇姫が現れて「赤影たちの様子は?」「まだ何も気づいていないようです」この下忍の眉も見慣れた拓三。これがメインキャストなら、将軍の膝元の武士に幻妖斎の下忍がまぎれこんでいたという別展開。

この闇姫編は東福寺の有名な通天橋がロケに使われ、目を楽しませてくれるのですが、何しろこちらはウォーリーを探せ状態のため、もはや拓三しか目に入りません。その他、Wikiで言う第28話でも別の話でもいろいろ見つけましたが、いまは割愛。

東映京都撮影所の大部屋俳優だった川谷拓三は、深作欣二「仁義なき戦い」第2作目を機にスター街道を走り始めました。春日太一『あかんやつら』には、セリフまわしの苦手な川谷にチーフ助監督の土橋亨が稽古をつけた話が載っています。また高平哲郎『みんな不良少年だった』には登り始めた頃の彼のインタビューがあり、洋画が好きだとか初仕事は死骸役だったとか、さまざま興味深い。

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東映太秦映画村の春~春雨じゃ、濡れてゆこう

……春雨じゃ 濡れてゆこう

……雨降っていませんよ

「カムカムエヴリバディ」の伴虚無蔵とひなたの会話です。

春の空は時代劇とよく似合う。霞がかってきた空の淡い色を眺めながら時代劇の現場を支えてきた人たちのことを考える。まことに味わい深い春であります。

この記事を書いた人
入江 澪